給油所向け地下埋設タンク製造の玉田工業(金沢市)は早ければ2013年中に、ベトナムのハノイ近郊にタンク製造の新工場の建設を始める。14年中の稼働が目標。給油所の地下埋設タンクは日本国内での需要が減少している一方、経済成長が続くベトナムでは給油所の開設が相次いでおり、需要の増加が見込まれる。同社は海外進出第1弾として中国に生産拠点を構えたが、給油所を巡る法整備の遅れなどから一時撤退、ベトナム市場の開拓に乗り出す。
新工場のタンクの生産能力は年間300基を予定している。現在の中国工場の約5倍。土地の購入や設備など総投資額は5億円程度を見込む。現在ハノイ近郊で工場を建てるための土地を選定中。新工場を運営する現地法人を年内に立ち上げる計画だ。
新工場で製造するのは給油所向け地下タンクと、溶剤などを入れる一般工場用のタンクなど。生産設備は旋盤機などは現地で調達するが、内容物の漏れを防ぐためにタンクを回転させて繊維強化プラスチック(FRP)を吹き付ける特殊な機械は、日本から持ち込む計画。当面は日本人3人、現地採用10人で運営する予定だ。
ベトナムでは経済発展に伴い自動車数が急増している。ハイブリッド車や電気自動車などは普及までに時間がかかるとみられ、給油所の数は増加することが見込まれる。同社のタンクはFRP塗装による機密性の高さが売り物で、地下に埋設しても周辺土壌の汚染はない。ベトナムでは環境配慮に対する理解が広がっているため、同社の高機能タンクの需要が増えるとみる。
溶剤用タンクはベトナムに進出する日系企業に販売する。近年、日系企業のベトナム進出が増えており、需要は上向くとみている。
同社は10年に中国・河北省で現地企業とタンク製造の合弁会社を立ち上げ、生産を始めた。生産能力は年60~70基で、玉田工業の出資比率は30%。しかし、中国では給油所周辺の土壌汚染規制など環境面での法整備が進んでいないのが現状。同社の高機能タンクは需要の伸びが見込めず、5月までには合弁を解消、現地工場は合弁相手に引き渡す。
一方、日本国内の給油所は需要の減少と価格競争の激化などに加え、消防法改正による費用負担増加を受けて減少している。資源エネルギー庁によると、11年度末の全国の給油所数は3万7000強。01年度末と比べると3割弱減った。今後も減少は続くとみられる。
日本経済新聞2013年2月27日より